体験セミナー開催報告

開催日:2019年5月6日

会場: 越谷ラーニングスタジオ

講師: 日本医療教授システム学会  秋場 研 様

 

〈以下、講師による開催報告です〉

先日、埼玉の越谷ラーニングスタジオで日本医療教授システム学会セミナーを2本立てで開催させていただきました。セミナーの全内容をお伝えすることはできませんが、概要をご紹介します。

1.救命法インストラクターのための教育工学セミナー

教育工学セミナーは、昔あったAHAコア・インストラクターの内容をベースとしたワークショップとして企画しました。

今となっては古典的な印象もありますが、成人学習の基本を再確認する内容です。日本医療教授システム学会の最近の話題はAI(人工知能)ですが、コースインストラクターの場合は、教材設計というよりは、それ以前の末端の指導スキルの方に関心があるだろうということで、学習意欲の促進や、デブリーフィングとフィードバック、現場への転用といった話題を、日頃の指導を振り返りながら考えていただきました。

また、ガイドライン改定の変遷を歴史的に追うことで、現行のガイドライン2015講習の本質を理解しようという話題も盛り込みました。

AHAガイドライン2015の教育の章を見てもらうとわかりますが、AHA講習はインストラクショナル・デザインに基づいて教材設計されています。

・認知スキル
・態度スキル
・運動スキル

この3つの統合が重要で、そのためには現実味のあるシミュレーションと、その振り返り(デブリーフィング)が欠かせません。

G2015のBLSからは、10分間のチーム蘇生とデブリーフィングという革新的な新しいコンテンツが盛り込まれました。

これは、単にCCF(胸骨圧迫比)を高くするのが目的ではありません。CCFはチーム蘇生の有効性評価ファクターのひとつであって、シミュレーションは、認知スキル・態度スキル・運動スキルの統合を体験する場であり、講習会場での真似事を現実社会に転移させるための重要な教育手法なのです。

ガイドライン2015での重要な変更点といえば、筆記試験でテキスト持込可能になったり、昔は禁止されていた一人法BLSでもバッグマスクを使うことを解禁したり、かなり劇的な教材設計の変更がありました。

これらの変更には1本の筋が通っており、それが Life is why に象徴されているわけですが、そんな謎解きの4時間を過ごしていただきました。

近々控えたG2020の教材改定にスムースに対応するためにも、ガイドライン改定の歴史を理解しておくことは重要です。

そんなインストラクショナル・デザインを専門分野とする日本医療教授システム学会AHA国際トレーニングセンターのインストラクターのための勉強会でした。

2.血液媒介病原体講習

ハートセイバー血液媒介病原体(Heartsaver Bloodborne
Pathogens)コースは、AHAインストラクターなら誰でも開催できるプログラムですが、日本ではほとんど開催されていないのが現状です。

しかし、この4月から市民向けに止血帯(ターニケット)までも含めた出血コントロールを教える教育がスタートし、AEDと並べて軍用ターニケットを語る論調が出てきているため、救命法の指導員としては血液感染対策についてもきちんと教えられるアビリティが必要になってきます。

そこで、改めてAHA公式の血液感染対策講習を体験してもらう機会を作らせていただきました。

医療従事者であれば感染対策は常識的に知っていると思いますが、それを市民向けに伝えようと思ったときには、文化背景がまったく違いますので、医療者教育とは別のアプローチが必要です。

市民向け血液感染対策講習は日本には存在しないため、医療者向けの教育方法との違いなどを感じていただけたことと思います。

併せて、軍用ターニケットの適応とその市民教育上の課題についても、触れさせていただきました。ハートセイバー・ファーストエイド講習ではG2010から軍用ターニケットの使用について言及されるようになりました。

今、日本では、既成品のターニケットは医療機器承認がされており、緊縛止血法は医行為とみなされています。

AEDやエピペンと同様、医行為を市民に教えるという図式となり、その指導員の責任は重いものと言えます。

現実、ファーストエイド指導を行っているBLSインストラクターは多くはない印象ですが、BLS、ACLS、PALSインストラクターの中で、いちばん指導範囲が広いのがBLSインストラクターです。

医療者向けBLSプロバイダーだけではなく、応召義務のある市民救助者向けのハートセイバーCPRAEDコース、ハートセイバー・ファーストエイドコース、血液場階病原体コース、小児ファーストエイドなど、実に幅広い指導が可能な資格です。

BLSインストラクターの皆様には、ぜひその資格を余すところなく活用して、施設や地域の安全に寄与していただけたらと思っております。